今までと異なる形で「第二次世界大戦」と「巨大戦艦大和」を描いた山崎貴監督最新作「アルキメデスの大戦」がいよいよ7月26日に公開。本作は「ドラゴン桜」「インベスターZ」などユニークな発想と独自のテーマ性で時代に斬り込んできた稀代のストーリーテラー・三田紀房が数学者の視点で第二次世界大戦を描く漫画「アルキメデスの大戦」の待望の実写化です。
舞台は1933年(昭和8年)。日本は欧米列強との対立を深め、軍拡路線を歩み始めたことで、海軍省は世界最大の戦艦「大和」を建造する計画を秘密裏に進めていた。しかし、舘ひろし演じる海軍少将・山本五十六(やまもといそろく)は「今後の海戦は航空機が主流」という自論のもと、この計画へ反対するため、巨大戦艦の建造がいかに国家予算の無駄遣いか独自に見積りを算出して明白にしようと考えていた。しかし戦艦に関する情報は建造推進派の者たちが秘匿にしているため、軍部の息がかかっていない協力者を探していた。
そこで山本が目をつけたのが菅田将暉演じる、100年に一人の天才と言われる元帝国大学の数学者・櫂直(かいただし)。ところがこの櫂は数学を偏愛し、大の軍隊嫌いという変わり者で、頑なに協力を拒んだ。しかし、山本から「巨大戦艦を建造すればその力を過信した日本は必ず戦争を始める」と告げられ、この言葉に意を決した櫂は帝国海軍に飛び込んでいき、天才数学者VS海軍というかつてない頭脳戦が繰り広げられる…。
今回は「アルキメデスの大戦」のみどころを撮影秘話を交えてご紹介します!
①大物キャスト陣を驚かせた菅田将暉の圧巻の演技
菅田将暉さん演じる100年に一人の天才と呼ばれた櫂直(かいただし)。数学と美に執着し、軍隊嫌いを公言する変わり者。
この「天才数学者」を演じるため、菅田さんは専門家から数学について学び、数式をチョークで黒板にスラスラ書けるように練習したそう。さらに戦艦の製図をするシーンもあるため、数式の板書に加えて製図の練習も重ねました。
元々数学が好きだと語る菅田さんでしたが、数学者役には苦戦したそうで「数学に関して覚えるべきことをしっかり覚え、何度も書いて数式に慣れ、チョークでの板書の書き方を練習する、というようなことから力を入れていきました。まっすぐな横線を引くだけでもこんなに難しいものなのかと知りましたね。」と語っています。しかし、撮影本番で菅田さんは難解な数式を黒板にスラスラと書きながら長台詞を放ち、「天才数学者」として違和感が全くなく、カットがかかると現場で拍手が沸き起こったそう!
舘ひろしさんはその時のことを振り返り「あのシーンの菅田くんは圧巻でしたね。彼は完全に現場の空気を掌握しコントロールしていた。難解な数式を凄いスピードで書き起こしながら、長台詞を勢い良くまくし立てる、その熱量のこもった演技にはあの場にいる全員が圧倒されました。僕自身もすごく刺激を受けました。」と話しています。
また、山本五十六陣営と対立する海軍少将・嶋田繁太郎を演じた橋爪功さんも「菅田将暉くんにはビックリしました。数式や図式をスラスラと書きながら、セリフもテンポよく演じる、すごい才能です。若さってすごいね。」と語っています。
②舘ひろしが人生初の丸刈りで挑んだ、新しい山本五十六
山本五十六といえば、映画史において多くの俳優が重厚に演じてきたイメージが強い人物ですが、今回演じた舘ひろしさんのアプローチはどれとも違い、どこか軽やかで人間的な一面を垣間見せています。
館さんは山本五十六を演じることについて「男子ならばやはりやってみたい役だと思います。役の為に髪を短く切って欲しいとお願いされた時もやぶさかでなく、すごく嬉しかったです。第二次世界大戦前の少し若い時代を演じるということで色々な文献を読み直し、数々の名優が演じたものとまたちょっと違う山本五十六を意識して演じました。」と話しています。
菅田さんは館さんとの撮影を振り返り「やはりスーパースターです。すごくかっこいい背中だと何度も感じましたし、言葉づかいから食べ方まで、櫂の言葉を借りるなら「美しかったです。」とコメントしています。今回山崎組初参加となった館さんですが、山崎監督について「山崎監督とはぜひと一緒したいと思っており、今回念願が叶いました。映画のリズムに合ったものを撮れるまでしっかり粘る姿は勉強になりましたし、久しぶりに映画の現場らしい現場を見た気がします。」と語っています。館さん演じる少将だったころの山本五十六は必見です。
③原作者・三田紀房は笑福亭鶴瓶の大ファン?
原作者の三田紀房氏は笑福亭鶴瓶さんの大ファンで、原作では「鶴辺清」という名で鶴瓶さんそっくりに描かれているキャラクターが登場します。三田氏は「映画になると聞いた時、真っ先に「鶴瓶師匠は出ていただけるの?」と聞いてしまいました。今回望みが叶ってとても嬉しいです。」とコメントしています。「鶴辺清」は映画では大里造船業社長の「大里清」という役で、櫂に協力して巨大戦艦建造阻止することを決意します。
猛暑の2018年8月初旬、神戸と相生で撮影された「大里造船」のシーンでは、冷房機器のない中でおこなわれ、鶴瓶さんは氷嚢を頭や首に乗せながら暑さをしのいでいたそう。しかし、本番では全く疲れを見せず、空き時間は山崎監督も交えて談笑する姿や、菅田さんや田中正二郎役を演じた柄本佑さんとふざけ合う姿も見られ、鶴瓶さんがいいムードを作っていました。
鶴瓶さんは大里清役について「漫画で出てくるそっくりのキャラクターを演じると聞いて何のこっちゃと思って読んでみたら「そのまんまやんけ!」と驚きました!漫画通りやるならそれはもう僕が一番だと思います! 原作者の三田先生は僕に内緒で漫画を描きはったみたいですし、出演を聞いて凄く喜んでいたようで僕も嬉しかったです。」と語っています。原作と映画を見比べてみるとより一層面白いかもしれませんね。
④多くのキャストの印象に残った最重要シーンとは?
戦艦建造計画の最終決定を下す「大会議」のシーン。この最重要シーンは2018年8月中旬に、4日間かけ、台本20数ページ分、110カット以上という膨大な量の撮影が行われました。東宝スタジオに建てられた海軍省・大会議室の重厚感あふれるセットには菅田将暉さん、柄本佑さんに加え、舘ひろしさん、田中泯さん、小林克也さん、國村隼さん、橋爪功さんら豪華俳優陣が勢揃いし、大舌戦を展開しました。猛暑の中冷房機器を止めて熱気のこもる中、専門用語の交じる長セリフが続き、さすがのベテラン陣も苦戦していたそうですが、撮影の合間は笑い声が響き、非常に和やかだったそう。
菅田さんの数式を黒板に書き起こしながら長セリフで捲し立てる演技がみられるのもこのシーンで、館さん、橋爪さん、國村さん、小林さんらに「撮影で印象に残ったこと」を尋ねたところ、こぞってこのシーンのことを話したそうです。ベテランキャスト大絶賛の「大会議」のシーンは注目です。