家族の中でたった独り健聴者である少女は、「歌うこと」を夢みた。
【CODA(コーダ)とは】
コーダ(CODA / Children of Deaf Adults)とは、耳が聞こえない、または聞こえにくい親のもとで育つ子どものこと。本作は家族の中でただ1人の健聴者である少女が、家族やさまざまな問題を力に変えて自らの夢を実現していく姿を描いたヒューマンドラマ。
2022年の米アカデミー賞で、「作品賞」「助演男優賞」「脚色賞」の3部門を受賞したのを始め、ゴールデン・グローブ賞でも「ドラマ映画賞」「映画助演男優賞」を獲得。ハリウッドの映画俳優たちが選ぶ全米映画俳優組合賞でも、最高賞にあたる「キャスト賞」を受賞するなど、2021年~2022年の各映画賞を総なめしました。
ちなみに、同じ綴りのCODAは楽曲の終わりを指す音楽記号として用いられ、ひとつの章が終わり、また次の章が始まることを象徴しています。
一歩踏み出す勇気が、愉快で厄介な家族も、抱えた問題もすべてを力に変えていく。
【あらすじ】
海の町で暮らし、歌の大好きな高校生のルビーは、両親と兄の4人家族の中で一人だけ耳が聴こえる。家族のために、ルビーは“通訳”となり、家業の漁業も毎日手伝っていた。新学期、合唱クラブを選択するルビー。すると、音楽のヴィラロボス先生がルビーの歌の才能に気づき、音楽大学の受験を強く勧める。だが、ルビーの歌声が聞こえない両親は娘の才能を信じられず、家業の方が大事だと大反対。悩んだルビーは夢を諦め、家族の助けを続けることを選ぶ…。合唱サークルの発表会で、ルビーの歌声が聞こえないながらも、思いをくみ取った家族は意外な決意をし…。
【監督と主役】
監督・脚本はテレビシリーズ「オレンジ・イズ・ニュー・ブラック」のなどの脚本を担当、カンヌ国際映画祭出品の短編映画『Mother』を監督した、シアン・ヘダー。
自分以外の家族が皆、ろう者で、常に家族の「通訳」を行い、自分の夢である「歌」をあきらめようとする少女・ルビー役は、8歳から子役として活躍、『パイレーツ・オブ・カリビアン/生命の泉』にも出演、大ヒットテレビシリーズ「ロック&キー」で人気を博した、エミリア・ジョーンズ。手話トレーニングと共に9か月間ボイストレーニングを行い、本作では感動的な歌声を聞かせています。
【実際に耳の聞こえない俳優をキャスティング】
本作では主人公の家族で、ろう者である父・母・兄の3人の役を、実際に耳の聞こえない俳優が演じています。
母親のジャッキー役は、1歳半の時に麻疹で聴力のほとんどを失ったというマーリー・マトリン。デビュー作『愛は静けさの中に』(1986)の演技が絶賛され、アカデミー賞とゴールデン・グローブ賞で主演女優賞を獲得、TVシリーズ「リーズナブル・ダウト/静かなる検事記録」でも、ゴールデン・グローブ賞にノミネートされました。
父親のフランク役は、「クリミナル・マインド8 FBI行動分析課」や、「スター・ウォーズ」のスピン・オフTVシリーズ「マンダロリアン」や、ジム・キャリー主演の映画『ナンバー23』などに出演、本作でアカデミー賞とゴールデン・グローブ賞で助演男優賞に輝いたトロイ・コッツアー。
兄のロッシ役は、手話演劇の常設劇団「デフ・ウェスト・シアター」出身で、「スイート・ライフ オン・クルーズ」、「スイッチ ~運命のいたずら~」「YOU ―君がすべて―」などのTVシリーズで活躍しているダニエル・デュラント。監督のシアン・ヘダーは、「耳の聞こえない人の役があるのに、耳の聞こえない優秀な役者を起用しないというのは考えられなかった」と語っています。
本作の大ファンで、この度、金曜ロードショーのアンバサダーを務める事になったフリーアナウンサーの宇垣美里さんからコメントを頂きました。
●宇垣美里さんコメント
昨年のアカデミー賞で作品賞を受賞した『コーダ あいのうた』が地上波初放送!私の大好きな作品です。
この作品は、イキイキとしたろう者を描いた作品でありながら、普遍的な誰もが共感できる親子の話でもあり、青春映画でもあり、音楽映画でもある、万人に刺さる作品になっていると思います。
特に私が好きなポイントは、手話という言語の豊かさです。
実際に耳の聞こえないろう者の方が演じているという部分もあるのだと思うのですが、とにかく手話という言語がこんなにもイキイキしているのだということを私はこの作品で改めて知ることができました。
一番それを感じたシーンは、ろう者ではない主人公が「どうして歌を歌うの?歌を歌うときにどんな気持ちになるの?」と先生に聞かれて、言葉では説明できなくて手話で伝えるシーンです。彼女にとって手話は“コーダ”(ろう者の子ども)であるからこそ第一言語で、だからこそ、この気持ちを、「手話なら」表現できるというのが、それだけで伝わってくる…この言葉って何て豊かなんだろうっていうことがわかるシーンでした。
おすすめのシーンはまだまだありまして、特に皆さんに非常にささるんだろうなと思うのが、音楽発表会のシーンです。
観客の前で主人公はじめ、合唱グループのみんなが歌を歌うのですが、そのシーンの中で一瞬無音になるんです。それが主人公の家族が、その瞬間をどのように受け止めているのかっていうのを、私たちにも体験させてくれるシーンになっています。
もちろんそれは耳の聞こえる人にしか開かれていない表現ではあるのですが、それによって家族が、「彼女の歌いたいという気持ちを、どうしてわからない、理解し得ないのか?」ということが伝わってきます。
その後に、それでも「彼女がどうして歌いたいのか、歌っているときにどういう風な表現なのか?」というのを知りたくて、父親役のトロイ・コッツアーさんが手を差し伸べるシーンがあるんですけれども、もう!そこが堪らなくて…。
きっと分かり得ないし、完全に理解することはできないとは思うのですが、それでも知りたくて手を伸ばす。その姿勢というのは、こんなにも尊くて美しいんだと思いました。
本当に素敵な作品なので、多くの方に見て頂けたら嬉しいです!
- 『コーダ あいのうた』(2021米・仏・加)
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6月16日(金)よる9時00分~10時54分 地上波初放送
◆ 監督・脚本:シアン・ヘダー
◆ 製作:フィリップ・ルスレ、パトリック・ヴァックスベルガー
◆ 撮影監督:パウラ・ウイドプロ
◆プロダクションデザイナー:ダイアン・リーダーマン
◆衣装:ブレンダ・アバンダンドロ
◆音楽:マリウス・デ・ブリーズ
◆音楽プロデューサー:ニコライ・バクスター
◆出演(内は日本語吹替)
ルビー・ロッシ:エミリア・ジョーンズ(野村麻衣子)
フランク・ロッシ:トロイ・コッツァー
ジャッキー・ロッシ:マーリー・マトリン
レオ・ロッシ:ダニエル・デュラント
マイルズ:フェルディア・ウォルシュ=ピーロ(玉木雅士)
ヴィラロボス先生:エウヘニオ・デルベス(松本保典)【ストーリー】
豊かな自然に恵まれた海の町で暮らす高校生のルビーは、両親と兄の4人家族の中で一人だけ耳が聴こえる。陽気で優しい家族のために、ルビーは幼い頃から“通訳”となり、家業の漁業も毎日欠かさず手伝っていた。新学期、秘かに憧れるクラスメイトのマイルズと同じ合唱クラブを選択するルビー。すると、顧問の先生がルビーの歌の才能に気づき、都会の名門音楽大学の受験を強く勧める。だが、ルビーの歌声が聞こえない両親は娘の才能を信じられず、家業の方が大事だと大反対。悩んだルビーは夢よりも家族の助けを続けることを選ぶと決めるが、思いがけない方法で娘の才能に気づいた父は、意外な決意をし・・・。